ブラックホールになれない巨大星〜日経サイエンス2006年3月号より
ブラックホールはこれまで予想されていたよりも形成しにくいもののようだ。
理論計算によると,質量が太陽の約25倍以上ある星は超新星爆発を起こした後にブラックホールになり,それよりも質量の小さい星は高密度で高速回転する中性子の塊,中性子星になると考えられてきた。
だが,「ウェスタールンド1」という星団にある中性子星を米航空宇宙局(NASA)のX線観測衛星チャンドラで調べたところ,この説がひっくり返った。この中性子星の爆発前の質量を,近くにある大きな星をもとに推定したところ,太陽質量の40倍以上になった。この星団で最大級の星だったとみられる。
非常に重い星は活発に燃え続けるので,超新星爆発を起こすときには,中性子星になるくらいの質量しか残らないのだろうと考えられる。太陽質量の25~40倍の星がブラックホールになる割合は,以前よりも低く見積もらなければならないだろう。Astrophysical Journal Lettersに掲載予定。