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「だいち」がとらえた大規模地滑り〜日経サイエンス2006年5月号より

宇宙航空研究開発機構(JAXA)はフィリピンのレイテ島で2月17日に起きた大規模地滑りの被災地を陸域観測技術衛星「だいち」が撮影した画像を公開した。搭載した合成開口レーダー「PALSAR」でとらえた画像と1996年に地球資源衛星「ふよう1号」が観測した画像を比較した結果,地滑りの起きた部分の山の稜線が約100mにわたって崩落していることがわかった。
「だいち」は1月24日にH2Aロケット8号機で打ち上げられたばかり。試験運用の一環として今回の地滑りを撮影した。PALSARはLバンドという比較的長い波長の電波を出すレーダーで,主に陸域の観測に適している。凹凸部分が崩落などで平らになると電波がより強く跳ね返るようになるため,地形の変化を観測できる。
今回の観測でも,山頂から南東に向かって幅1.5km程度,長さ約3.9kmにわたって水分を多く含む領域が広がっていることがわかり(左下写真の中央,赤い部分),地滑りで土砂が堆積した一帯と考えられるという。
地滑りの発生前には豪雨や地震などが起こることが多い。「だいち」で継続的に観測し,発生以前のわずかな陸地の変化を読み取れば,災害予防情報を発信できる可能性がある。

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