赤に敏感〜日経サイエンス2006年7月号より
ヒトや近縁の霊長類が色覚を持つようになったのは,紅潮した頬や恐怖で青くなった顔を見分けるためだったのかもしれない。
トリやハチの色受容体は複数で可視光領域全体をまんべんなく感知するのに対し,ヒトや旧世界ザルが持つ3種類の色受容体のうち2種類はいずれも波長約550nmあたりの赤色光を最も強く感じる。血中ヘモグロビン濃度の変化によって起きる肌の色の微妙な変化を感知できるのはこのためだと,カリフォルニア工科大学の神経生物学者たちは考えている。配偶者候補が健康な血色をしているか,敵が恐怖で青ざめているかなどを判別するのに役立つだろう。旧世界ザルの顔や尻に毛がなく,皮膚が露出していて血色がわかりやすいという事実が,この説を支持している。
Biology Lettres誌6月22号に掲載予定。