月の裏側が太っているわけ〜日経サイエンス2006年12月号より
![]() IMAGE:NASA |
月の裏側は赤道のあたりが膨らんでいて,これは長年の謎となってきた。従来の説明は,年若い月を覆っていたマグマの海が重力と月の自転によって変形し,そのまま固まって膨らみができたというものだが,この仮説は理論モデルが予測する月のかつての軌道サイズと矛盾をきたしてしまう。
最近,マサチューセッツ工科大学の研究者たちが新たな計算結果を発表した。誕生から1億~2億年後の月の軌道が地球にもっと近く(従来説の半分),より楕円に近かったとすれば,膨らみに説明がつくという。この軌道は,2回の公転の間に3回自転するという点で現在の水星に似ており,膨らみの位置をその場にとどめるのに最適だったはずだ。
また,月がこの軌道をたどっていたとすると,地球から見た月の満ち欠けはわずか18時間周期で完了し,現在よりも10倍強い潮の干満が1日に4回起こったと考えられるという。Science誌8月4日号に掲載。