“こびとの国”から〜日経サイエンス2007年6月号より
3年前,インドネシアのフローレス島で人類の頭蓋骨が発見された。この人類は非常に小さく,「ホビット(こびと族)」の愛称がついた。その後,激論が続いている。発見者たちは背丈1mほどのこの人類は1万2000年前という比較的最近に生きていたのだが現生人類とは異なる新種であると分類したのに対し,一方では小頭症の現生人類であると主張する者もいた。小頭症は脳が正常な大きさに達しない疾患だ。
最近,新種説を支持する新たな研究が発表された。フロリダ州立大学の古人類学チームが小頭症患者9人について頭蓋骨モデルを作り,“ホビット”の頭蓋骨とは大きさが合わないと結論づけた。
この発見は米国科学アカデミー紀要2月13日号に掲載された。より重要なのはおそらく,ホビットが発見された洞窟を関係者が再び開け,その下に新たに見つかった洞窟と併せて調査が進んでいることだろう。新たな化石標本が発見されるかもしれない。