SCOPE & ADVANCE

出血停止〜日経サイエンス2007年2月号より

 さまざまな種類の止血剤が戦場や手術などで使われているが,どれも欠点がある。高熱や血栓,アレルギー反応などを引き起こす恐れがあるのだ。ところが,ある生分解性タンパク質の溶液を使えばわずか数秒で止血が可能なうえ,さまざまな動物に対して無害で,効果も長続きするようだ。
 マサチューセッツ工科大学と香港大学の研究チームはペプチド(短いタンパク質分子)からできた液体を開発した。この液体はハムスターの切断された視神経を修復したほか,マウスの脳出血を抑制,いろいろなタイプの傷からの出血を止めることができた。傷の上に繊維質の網状組織ができて止血したようだが,この物質がどのように作用するのか詳しいことはわかっていない。研究グループは通常の血栓を生じるのではなさそうだと,Nanomedicine誌オンライン版2006年10月10日号に報告している。