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ゴムのようなプラスチック〜日経サイエンス2007年4月号より

 東レは山形大学の井上隆(いのうえ・たかし)教授と共同で,プラスチックの強度とゴムの衝撃吸収力を兼ね備えた新素材を開発した。溶けた状態のプラスチックとゴムを,麺棒でそば生地を延ばすように上下に逆向きの力を加えながら練り混ぜると,ゴム粒子のなかにそれぞれの材料の特性を併せ持つナノ粒子が多数分散した構造になった。
 これまでもプラスチックの耐衝撃性を上げるためにポリマーを組み合わせる技術はあったが,分散粒子のサイズはマイクロメートル単位どまりで,かえって強度や剛性を損なっていた。これに対し新たに東芝機械と共同開発した押出機はスクリューの形状を工夫するなどして2種のポリマーを滞留させる時間を増やし,反応時間が従来の5倍になった。また,ポリマーどうしがよく練り合うようになり,特異な構造ができあがった。
 プラスチック成分にポリアミド系樹脂(ナイロン),ゴム成分にポリオレフィン系素材を選び,この複合材料で作った成型品を試験したところ,樹脂自体の強度や剛性を保ちつつ,ゴムのように衝撃を吸収。従来のプラスチックは粉々になってしまったが,新素材は自らが変形することで衝撃のエネルギーを吸収し,最後まで割れなかった。
 ゴム粒子中にナノ粒子が分散した構造がポイントだと見られている。練り混ぜる際にゴム粒子の界面でナイロンとポリオレフィンの官能基が結びつき,数十nmサイズの粒子となってゴム粒子の内側に入り込むようだ。
 自動車のバンパーに使えば,歩行者にぶつかってもけがが軽くすむようになるかもしれない。「これまで自動車は構造によって衝撃を吸収してきたが,素材自体で衝撃を吸収させる提案をしていきたい」と東レの井上俊英(いのうえ・としひで)化成品研究所長は話す。そのほか電気・電子部品,スポーツ用品などに応用する予定で,2010年までの商品化を目指している。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業。

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