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甘い夢,記憶の香りつき〜日経サイエンス2007年7月号より

バラのベッドで一晩眠ると,記憶が冴えるかもしれない。

 

 睡眠の目的はいまだに謎だが,一説によると,経験したことを眠っている間に追体験することで,長期記憶に収納するのを助けているという。この説を調べるため,バラの香りがする部屋で被験者にコンピューター画面上でトランプゲームの「神経衰弱」をやってもらった。画面上に伏せられたカードのうち2枚1組が一度に数秒間ずつひっくり返って表を見せるので,この位置を記憶していく。その後,被験者が眠っている間にバラの香りを嗅がせた。匂いは記憶に残りやすいことがよく知られている。

 最も深い眠りとされる徐波睡眠中に被験者に香りを嗅がせると,目覚めた後に神経衰弱ゲームの正解を言い当てる率が上がった。また,徐波睡眠中の脳画像から,香りの合図によって海馬が活性化していることがわかった。海馬は記憶に関連する脳領域だ。

 独リューベック大学の研究者たちによる発見。Science誌3月9日号に掲載された。

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