News Scan

脳損傷で葛藤なし?〜日経サイエンス2007年8月号より

 暴走列車の前に誰かを突き出せば別の5人の命が助かるとしたら?1人を犠牲にすることに迷いを禁じ得ないだろう。しかし腹内側前頭葉皮質(VMPC)に損傷のある人は,まるで躊躇しないかもしれない。この領域は前脳の一部で,情緒反応に関係している。

 上のような状況を想定してもらったところ,腹内側前頭葉皮質に損傷のある人は健康な人と比べ,多くの人のためなら特定の人の命を投げ出す選択をする割合が3倍に達した。赤ちゃんの命を犠牲にするかどうかという同様のシナリオでは,他の赤ん坊のために1人を死なせると答えた割合は5倍となった。
論文の主執筆者である南カリフォルニア大学のダマシオ(Antonio Damasio)は,これらの患者は道徳規準を欠いているのではなく,感情と理性の間に生じる自然な葛藤が起こらないようだという。また,この種の決定が道徳的判断を担う単一の機能領域ではなく,互いに競合する2つの異なるプロセスによって生じることも示している。Nature誌3月22日号に掲載。

サイト内の関連記事を読む