SCOPE & ADVANCE

肉感をリアルに再現〜日経サイエンス2007年9月号より

 女性の美しいバストをつくるブラジャー。“寄せ上げ効果”を高めるには相応の力が必要だが,きつすぎるとストラップが皮膚に食い込んでしまう。効果が高く,つけ心地にも優れたブラジャーを開発するには,精密なフィッティッングテストがカギだ。下着メーカーのトリンプ・インターナショナル・ジャパンはこのテスト用に,人体の皮膚や筋肉,皮下脂肪の弾力性,反発力を再現した「ソフトボディ」を開発した。
 実際に触ってみると,バストの柔らかさ,皮下脂肪の奥に潜む鎖骨や肋骨の感触,バストを寄せたときにできる谷間付近の細かなしわまで人間そっくりだ。試しにサイズの合わないブラジャーをつけさせると,ストラップやベルトが皮膚に食い込み,皮下脂肪がはみ出ているのが一目でわかる。商品開発の現場では,このソフトボディを使って寄せ上げ効果や谷間の美しさを評定,バスト以外の部分にかかる負担を検証するそうだ。
 皮膚や皮下脂肪の質感を再現しているのはゴム配合油を90%調合したスチレン系の熱可塑性エラストマー(エラストマーは弾性に富むゴム状のプラスチックで,ドライバーのグリップなどに使われている)。鎖骨や肋骨などの骨格は繊維強化プラスチックでできている。これまでシリコーンを使った人工ボディはあったが,人間の肌に比べて素材が硬く,ブラジャーによってどのように補正されるかを確かめにくかった。ソフトボディなら加わった力に応じて人体同様に皮膚や皮下脂肪が移動し,補正の効果を厳密に確認できる。
 実際の女性モデルによるフィッティッングテストでは,モデルの手配や時間的な制約,男性開発者が直接チェックしずらいなどの問題があったが,ソフトボディなら解決。金型を作れば1体あたり20万円程度で量産も可能という。今後は人工皮膚の表面に着圧センサーなどの計測装置を埋め込み,フィット性をより精密に確認できるようにする予定だ。

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