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低圧で作れる超硬材料〜日経サイエンス2007年10月号より

 ダイヤモンドは最も硬い物質であり,岩石など他の頑丈な物体を切断するのに理想的だ。だが高価なうえ,鋼鉄など鉄を含む金属を加工すると,反応によって軟らかな鉄炭化物が生じて劣化する。鋼鉄の切断には立方晶窒化ホウ素が最適。ダイヤモンドと同程度に硬く,40~50GPa(ギガパスカル,1GPaは約1万気圧)の圧力に耐えられる(ダイヤモンドは70~100GPa)。しかし,立方晶窒化ホウ素の製造には高温・超高圧(1500℃,5GPa)が必要で,費用が高くつく。
 低圧で超硬材料を合成できれば,安く作れるだろう。カリフォルニア大学ロサンゼルス校の物理化学者トルバート(Sarah Tolbert)は「試行錯誤で新たな硬質材料を見つけるのではなく,設計しようと考えた」という。
 ダイヤモンドと窒化ホウ素の場合,短い共有結合によって構成原子が全方向に強く結びついているため,優れた硬度が生じる。これに対し,ある種の「超非圧縮性金属」は2次元的に硬い。つまり,圧縮しにくい(内部の電子が強く反発し合うため)ものの,層状に配列した原子の層が互いに滑り合うので比較的軟らかい。トルバートらはこうした金属に別の元素を加え,各層を共有結合で結びつけることによって硬化する方法を発見した。非圧縮性は元のまま,各層の滑りが妨げられるので硬度が上がる。
 オスミウムという金属とホウ素を常圧・1000℃の条件で結びつけ,非圧縮性と硬度がダイヤモンドとほぼ同じ金属を2005年に作り出した。今回,オスミウムの代わりにより安価なレニウムを用いて二ホウ化レニウムを合成し,Science誌4月20日号に報告。ダイヤモンドにひっかき傷をつけられるほど硬く(約48GPa),非圧縮性も同程度だ。この方法によって,さらに安価な超硬化合物が生まれるだろう。

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