SCOPE & ADVANCE

「だいち」がキャッチしたペルー地震の地殻変動〜日経サイエンス2007年11月号より

 日本時間8月16日に起きたペルー大地震。この前後で,震源地付近が隆起した様子を宇宙航空研究開発機構(JAXA)の陸域観測技術衛星「だいち」がとらえた。搭載レーダーで観測した画像を解析した結果,衛星と地面との距離が最大で約1.3m近づいた。

 

震源地はリマの南南東145kmの沖合,震源の深さは39km。マグニチュード8.0の大地震で,翌日には日本の太平洋沿岸でも最大で20cmの津波が観測された。

 「だいち」は震源地付近を合成開口レーダーで観測し,7月12日と8月27日の画像データを取得した。このレーダーは衛星から発射した電波の反射をとらえ,衛星と地面との距離を割り出す。2回の観測で得られた距離の差をとれば,地震の前後に地面がどれだけ隆起または沈下したかがわかる。

 

 上の図は「差分干渉処理」という手法で描かれた地殻変動図で,青から緑,黄,赤,青までが1周期(=11.8cm)として表されている。図で「+5.9cm」と表示した地点から「+135.7cm」の地点までに11周期の色の変化があり,最大で約1.3mの隆起が見られることがわかる。同じく「だいち」による観測で,新潟県中越沖地震では30cm,能登半島地震では45cmの隆起が見られたが,ペルー地震の隆起は非常に大きく,激しい地殻変動があったことを物語っている。

 

 「だいち」は地表の基準点に頼らずに2万5000分の1の地図を作れるほどのデータ収集能力があり,今後も大規模災害の状況把握や資源探査などに活躍しそうだ。

サイト内の関連記事を読む