SCOPE & ADVANCE

反物質入りの分子〜日経サイエンス2008年1月号より

水素原子は1個の陽子の周りを1個の電子が回っている。電子とその反粒子である陽電子が組みになると,これに似た短命の原子ができることが,数十年前から知られてきた。「ポジトロニウム」と呼ばれるものだ。カリフォルニア大学リバーサイド校の科学者たちはこのほど,2個のポジトロニウム原子を組み合わせて,1個の分子「ダイポジトロニウム」を形成することに成功した。
まず磁気トラップ内に約2000万個の陽電子を集め,次にこれらの陽電子を多孔性のシリカ薄膜の一点に一挙にぶつけた。陽電子ビームの持続時間は数ナノ秒ほど。すると陽電子は孔のなかに拡散し,シリカ薄膜から電子を引き込んで,およそ10万個のポジトロニウム分子ができた。
これらの分子を調べることにより,反物質の研究に新しい道が開かれ,なぜ反物質が宇宙にごく少量しか存在しないのか,理由がわかるかもしれない。また,電子と陽電子が最終的に衝突して生じるガンマ線を指向性エネルギー兵器に使ったり,発電用核融合炉の点火に利用できるかもしれない。詳しくはNature誌2007年9月13日号に。

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