動物に注目〜日経サイエンス2008年2月号より
本物のインパラ(アフリカにいる大型のカモシカ)を見つけるのは,自動車のシボレー・インパラを注視するよりも簡単らしい。
ヒトは進化の過程で,捕食動物と獲物,仲間のヒトに目を光らせるのが生死を分かつ重要事項だった。そこである研究チームは,現在の人間も無生物より動物に多くの注意を払うのではないかと考えて調べた。被験者に2枚1組の風景写真をちらっと見せる。2枚は1カ所だけが違えてある。
その違いが動物(人間も含む)に関する場合,写真の隅で背景に紛れていても,被験者たちは違いが無生物に関する場合よりも,かなり速く正確に見分けた。さらに,違いが自動車に関する場合も,この結果は同じだった。被験者はおそらく,自動車の進行方向の変化が自分の命にかかわる重要事項だと何年も気をつけてきたと思われるが,やはり動物の違いのほうに速く気がつく。
狩猟採集生活を送っていた私たちの祖先が視覚的に何を優先してとらえていたかは,現代では役立つ機会がめっきり減ったものの,現代人の脳にも埋め込まれたままになっているらしい。米国科学アカデミー紀要オンライン版2007年9月24日号に報告。