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電球型蛍光灯の捨て方〜日経サイエンス2008年2月号より

省エネ製品だが,水銀の処理に配慮が必要だ

 

 

電球型蛍光灯を買う人が増えている。標準的な白熱電球に比べてエネルギー消費が25%,寿命は10倍とあって,エコライフの象徴にして気候変動と闘う手段にもなっている。オーストラリア政府は一般家庭と企業に対し,白熱電球が切れた場合には電球型蛍光灯などの省エネ照明に交換するよう義務づける予定で,温暖化ガス排出を年間400万トン削減する計画だ。米国でも少なくとも4つの州と連邦議会が同様の法律を検討している。
ただ,電球型蛍光灯には1つ欠点がある。水銀を含んでおり,通常のごみと一緒には捨てられない。米国での販売個数は年間約20億個(電球全体の約5%)に上り,これらの寿命が尽きた後に生じる年間10トンの水銀をどう処理するか問題になってきた。
電球型蛍光灯に水銀は不可欠だ。静電気を帯びた水銀のガスが紫外線を発し,これを受けて電球内面のリン化合物の塗膜が発光する。水銀は強い神経毒で,特に胎児や子どもには危険だ。米環境保護局(EPA)によると,米国で生まれる子どもの6人に1人がかなりの濃度の水銀にさらされており,記憶障害や学習機能障害が心配される。
電球型蛍光灯1個には約5mgの水銀が含まれている。ボールペンの先端に露出しているインクとほぼ同量だ。もちろん,蛍光灯の水銀は汚染された魚に含まれる水銀と同じ種類のリスクをもたらすわけではない(米食品医薬品局の許容基準は170gのツナ缶に対して0.17mg)。だが,ごみ埋立地から染み出して水源に混入したり,焼却されて空中に飛散したりする恐れがある。

 

まだ低い回収率

メーカーの長年の努力にもかかわらず,水銀に代わるものは見つかっていない。ただ,蛍光灯1個あたりの使用量の削減には成功している。「メーカーは水銀に高い注意を払うようになった」というのは,消費財による健康と環境への影響の削減を目指す非営利団体プロダクト・スチュワードシップ研究所(ボストン)のスタンウッド(Bill Stanwood)だ。
ただ,企業ユーザーは通常の蛍光灯を回収する必要性を認識しているものの,一般家庭はまだ追いついておらず,照明・水銀リサイクル業者協会によると米国内の電球型蛍光灯の回収率は約24%。同協会のアバナシー(Paul Abernathy)は「米国民の1/3は蛍光灯をごみとして捨てることを禁じた地域に住んでいる」という。
現在,電球型蛍光灯の回収は地域によってさまざまだ。照明機器メーカーのシルバニアは電球1個につき約1ドルの費用がかかる郵送返還キットを提供している。1億個の年間販売目標を掲げるウォルマートは使用済み電球型蛍光灯の回収コーナーを設置(ただしカリフォルニア州の店舗のみ)。米国郵政公社は郵便局に回収箱を設置することを検討中だ。

 

地道な取り組み広がる

回収が経済的に成り立つことを示している州が少なくとも1つある。バーモント州は世帯あたりの電球型蛍光灯販売量が最高水準にあり,1998年に回収を法律で義務づけた(ミネソタ州に次いで2番目)。2005年8月,州内の雑貨量販店トゥルー・バリューの店舗は顧客から使用済み電球を回収し,商品配送用トラックで倉庫に戻す作業を始めた。この「逆配送」に電球1個あたり約35セントかかると同州環境保護局のネイブル(Karen Knaebel)はいう(州の調査によると,バーモント州住民の2/3は電球1個のリサイクルに50セント払う意思がある)。
これにより同州は2年間で,長さにして約4000m分の従来型蛍光灯と4000個の電球型蛍光灯を回収した。現在,回収率は年間に17%上がっている。
プロダクト・スチュワードシップ研究所はこうした成功例を他の地域にも広げたいと考えている。スタンウッドらは回収手続きを標準化するため,関係者による全国的な協議を進める計画だ。だが当面,回収を望む消費者は自分で何とかしなければならない。

 

 

割ってしまったら…
自宅で電球型蛍光灯が割れても,危険物処理班の出動を要請する必要はない。窓を開け,水銀ガスを逃す。手袋をはめ,粘着テープを使って電球の内部から小さな破片や粉状の物質を取り出す。大きな破片をテープとともにビニール袋に入れる。周囲に掃除機をかけたら,掃除機の袋をビニール袋に入れ,二重に封印して廃棄する。