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永遠に続く流れ〜日経サイエンス2008年4月号より

 絶対零度に近くなると,物質は摩擦ゼロで流れる不思議な状態になる。「超流動」という現象だ。ボース・アインシュタイン凝縮体(極低温の粒子が集まって1つの超粒子として振る舞うもの)のなかでは,こうした流れが永遠に続きうることが原理的には知られていたが,実際に観測された例はなかった。だが最近,米標準技術研究所(NIST)のグループがドーナツ状の凝縮体を作り,円形の超流動を10秒間持続させた。
 過去の実験で使われた球形や葉巻状の凝縮体とは違って,ドーナツ状の場合は安定した流れを持続できる。中央の穴が動いて周囲の凝縮体の流れを妨げるにはエネルギーが必要になるからだ。この発見はPhysical Review Letters誌に掲載予定。超流動に関する詳しい知見を与えてくれるとともに,非常に正確なナビゲーション用ジャイロスコープにつながるだろう。
 極低温の固体中の粒子も摩擦ゼロで流れる可能性があるが,こうした「超固体性」を観察したとする過去の研究を疑問視する物理学者もいる。Nature誌2007年12月6日号には,固体ヘリウム(ヘリウムは標準圧力では絶対零度になっても液体だが,高圧を加えた場合には固体になる)は温度が絶対零度に近づくにつれて硬度が増すという報告が掲載された。この現象は,過去の実験で見られた超固体性に似た作用かもしれない。あるいは,超固体性のまったく新しい性質を示している可能性もある。この謎を解くには,さらなる実験と極めて“冷”静な論理が必要だろう。

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