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凝視する脳〜日経サイエンス2008年4月号より

 身体醜形障害(BDD; Body Dysmorphic Disorder)の患者は自分自身を醜いと感じる。わずかな異常に目が行き,実際には存在しない欠陥があると思い込むこともあり,何度も整形手術を受けたり自殺傾向が高まったりする。こうした歪んだ自己イメージがなぜ生じるのだろう。外見を重視する社会のせいだけではなく,視覚に関係する脳にちょっとした異常があって世界が本当に違って見えているらしい。
 カリフォルニア大学ロサンゼルス校の科学者たちが,顔のデジタル画像を映すゴーグルを12人の身体醜形障害患者に装着して調べた。映像は未加工の写真や線画か,しみやしわなどの細部をぼかした画像のいずれかだ。
 機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)で脳の様子を見たところ,この障害を持つ人は通常よりも脳の左半分を使うことが多いことがわかった。左脳は複雑な細部の認識に適した部分だ。この発見は将来,顔をより正確に知覚するよう脳を再教育するのに役立つかもしれない。Archives of General Psychiatry誌2007年12月号に掲載。

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