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長持ちする蚊よけ薬

 虫よけ剤として最も広く使われているのはディート(DEET)という化合物(化学名はN,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド)で,他の防虫剤の効果を評価する際の基準物質にもなっている。しかし最近,それより3倍以上も長持ちする蚊よけ薬が見つかった。
 ニューラルネットワーク(神経回路の働きを模したコンピューター)を利用して発見された。まず,既存の防虫剤150種の分子構造をニューラルネットに入力して学習させた。その後,未評価のピペリジン系化合物およそ2000種をこのニューラルネットで評価した。ピペリジンは黒コショウに含まれる成分で,虫を寄せ付けない効果を持つ。
 こうして効果がありそうな化合物を選び,これを含浸したパッチを被験者の腕に貼ったうえ,約500匹の蚊が入ったケージのなかに腕を毎日1分間入れて,じっと動かさずに様子を観察した。
 ディートが蚊の攻撃を防いだのは平均で17.5日間だったのに対し,新化合物には最大で73日間も効果を発揮するものがあった。フロリダ大学と米農務省の共同研究で,米国科学アカデミー紀要5月27日号に掲載。

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