最初の細胞を復元〜日経サイエンス2008年10月号より
現在の細胞はミトコンドリアや細孔,核などを備えているが,約35億年前に出現した最初の細胞は単純だった。おそらく,遺伝物質が1枚の膜に包まれただけの構成だったろう。そこで疑問となるのが,そんな構成がどうやって栄養分を取り込み,複製・増殖できたのかという点だ。
最初の細胞はどんなものだったのか,ハーバード大学医学部の研究者たちがモデルを構築した。原始地球に存在していたとみられる複数の脂肪酸を使って,栄養分を取り込むのに十分な多孔性がありながら,内部の遺伝物質を保護できるだけの強度を持つ膜を作り出した。試験管の水のなかで,これらの脂肪酸は一片のDNAを取り囲んだ。これにヌクレオチド(遺伝物質の基本単位)を加えると,ヌクレオチドが細胞中に入ってDNAにくっつき,24時間かけてDNAを複製した。
今後は,もともとのDNA鎖と複製DNA鎖がどのように分離して細胞の分割と増殖を可能にしたのかを解明しなければならない。Nature誌6月12日号に掲載。