目の移動の進化〜日経サイエンス2008年11月号より
カレイやヒラメなど平べったい魚は,生まれたときには頭骨の両側に目がついているが,成体になると両目とも片側に寄る。この奇妙な変態には,かのダーウィンも目を白黒させた。一生を海底にへばりついて過ごす魚にとって両目が体の上面に付いているほうが好都合なのは確かだが,それなら生まれつきそうなっている魚に進化してもよさそうなもので,目の位置が少しずつ片寄っていく理由が見あたらない。目の位置が中間的な時期に特段の利点があるとも思えない。生物学者には,単独の突然変異をもとにこうした魚が一気に生まれたのだという考え方もある。
だが,そうではなさそうだ。シカゴにあるフィールド博物館のフリードマン(Matt Friedman)は進化の中間段階に相当する例を発見したと報告している。欧州の博物館に100年以上も埋もれていた約5000万年前の原始的な平魚の化石2つを調べたところ,これらの成体標本の頭骨はいくぶん非対称で,目はその両側に付いていた。
海底にすむ肉食性の魚にとって,このように目の片寄りが不完全であっても,完全に対称な場合よりは上方がよく見えるだろうとフリードマンは推測している。Nature誌7月10日号に掲載。