SCOPE & ADVANCE

コウモリの謎の死に手がかり〜日経サイエンス2009年3月号から

 米国北西部のコウモリが真菌(カビ)によって壊滅しつつある可能性がある。過去2年間,本来は冬眠しているはずの冬期に空を飛ぶなど,数種のコウモリが異常な行動を示してきた。コネティカット,マサチューセッツ,ニューヨーク,バーモントの各州で行われた調査の結果,個体数が75%以上減っていることがわかった。死んだコウモリや瀕死のコウモリの鼻や耳,翼には白い粉状の有機体がついており,「白鼻症候群」と呼ばれている。
 米国地質調査所の微生物学者ブレハート(David S. Blehert)らはこの白い粉がゲオミケス属(Geomyces)の真菌の一種と特定し,Science誌オンライン版10月30日号に報告した。ゲオミケス菌は至る所に見られ,4℃という冷蔵庫並みの低温下で繁殖する。これはコウモリがすむ洞窟では一般的な温度だ。
 このカビの出所も,コウモリの死にどう関係しているのかも不明なままだ。この病原体に襲われたコウモリは冬眠できなくなり,蓄えた脂肪を使い果たしてしまうのかもしれない。犠牲になったコウモリはほとんどがガリガリにやせていた。また,一部は洞窟の外で見つかっている。おそらく,餌となる昆虫を求めて外へ飛び出したものの,冬なので見つけられずに終わったのだろう。
 あるいは,より深刻な別の病気が広まっていて,このカビは単なる日和見感染なのかもしれない。実験室で健康なコウモリにこの真菌を感染させて影響を調べる計画だ。

サイト内の関連記事を読む