火星でメタン噴出〜日経サイエンス2009年5月号より
噴出地点が特定され,関心がさらに高まる
火星にメタンが存在することが数年前に発見され,地質活動の結果として生じたのか生物から生じたのか(地球上のメタンは主に生物由来だ)が関心の的になってきた。この問題の決着にはならないものの,新たな検出例が続き,研究は確実に深まっている。
米航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センターのムンマ(Michael J. Mumma)らは地上の望遠鏡から,火星表面の約90%を3火星年(7地球年と等しい)にわたって監視した。この結果,2003年夏に大規模なメタン噴出をいくつか検出,位置を特定した。
この研究はScience誌オンライン版1月15日号に発表されたが,ムンマはメタン噴出の重要性を過大評価しないよう,慎重な姿勢を取っている。メタンが永久凍土層の下にいる微生物の活動から生じた可能性もあるが,地下の岩石層に閉じ込められた水と鉱物の化学反応によってできた可能性も同じくらいある。また,メタンは過去のプロセスの名残であって,何らかの理由で地下に閉じ込められていたのが放出されているのかもしれない。
ただ,メタンを発生している個別の領域がわかったことで,新たなメタン源の探索や将来の着陸機による調査地点を絞り込むことができるようになった。