音波加熱で遺伝子オン〜日経サイエンス2009年6月号より
音波による加熱で遺伝子を活性化できることを,仏ボルドー第二大学の研究者たちが実証した。熱に反応するDNA鎖を含んだ生物発光遺伝子をマウスに組み込み,脚の幅0.5mmの領域に強い超音波を当てて皮膚直下を約43℃に熱したところ,そこが発光し,同遺伝子が活性化したことを示した。
この技法は有用なDNAを患者に導入する遺伝子治療に役立つ可能性がある。遺伝子治療では導入遺伝子をいつどこで発現させるかが重要で,現在は小分子医薬や電離放射線を使って遺伝子のスイッチを入れている。しかし化学物質は正確さを欠き,放射線は発がんの恐れがある。超音波による遺伝子活性化ならこうした問題を回避できそう。ただし,目的の臓器がある体内深くまで超音波を安全に到達させることが課題だ。米国科学アカデミー紀要1月27日号に掲載。