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ネアカかネクラか〜日経サイエンス2009年7月号より

 よいことに気づいて喜ぶ楽観的な人と,悪いことを重く受け止めて悩む悲観的な人──人間はふつう,このどちらかに偏っている。あなたはネアカだろうかネクラだろうか。ある一般的な遺伝子変異が,そうした傾向の根底をなしているらしい。
 英エセックス大学の科学者たちは97人の被験者について,気分に関連する神経伝達物質セロトニンを調べるとともに,被験者にさまざまな画像を見せて,どんな画像を好むかを調べた。脳細胞内のセロトニン濃度を調節する「セロトニン輸送タンパク質」を作り出す遺伝子には長いものと短いものの2タイプがあるが,長い遺伝子だけを持っている被験者は愉快な写真(チョコレートの画像など)に注意を向ける一方で,不愉快な写真(蜘蛛の写真など)を避ける傾向があった。これに対し短い遺伝子を持つ人は,それほど明確ではないが,逆の傾向を示した。
 この発見は不安症やうつ傾向の原因解明に役立つだろう。物事の明るい側面に目を向けさせてこれらを治療する方法につながるかもしれない。Proceedings of the Royal Society B誌2月25日号に掲載。

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