ボートを浮かべろ〜日経サイエンス2009年7月号より
水を通すどころか,はじいてしまう金網を想像してほしい。あまりに撥水性が高いので,その金網で作った救命胴衣なら馬をも浮かすことができる──そんな金網を中国のハルビン工業大学の研究チームが作り出した。太さ200μmの銅線と,200μmと同じかあるいはより小さな孔からできている。
この格子を硝酸銀溶液につけ,その後に酸にひたすと,銀でできた「高さ7μmの葉っぱのような構造が銅の上に成長する。この銀の葉っぱがゲンゴロウモドキ(Dytiscus marginalis)の腹部に生えている毛のように空気を捕らえて薄い膜を作るので,金網は超撥水性になる。
この金網で郵便切手大のボートを作って水に浮かべたところ,未加工の金網に比べて3倍の砂粒を載せることができた。また,ボートの上端が水面より下になっても浮かび続けた。研究チームはこの超浮揚技術を大きな船に適用するのは考えにくいとしながらも(疎水反発力だけでは大型船を浮かすには弱すぎる),新世代の小型水中ロボットにつながるかもしれないという。Applied Materials & Interfaces誌2月25日号に掲載。