解けたカルシウムの謎〜日経サイエンス2009年6月号より
海洋性プランクトンが死ぬと,炭酸カルシウムの外骨格が海水に溶けて海水がアルカリ性になるが,過去の研究によると,表層水はプランクトンのこの効果から予測されるよりもアルカリ性が強い。これに対し英エクセター大学の科学者たちは今回,魚の消化管にできる炭酸カルシウムの結石が海洋炭酸塩の相当な割合を占めている可能性があると指摘した。この種の“腸管結石”は20年ほど前にフグの腸内で初めて見つかったものだ。
研究チームがコンピューターモデルに基づいて推算したところ,世界の海にはざっと8億1200万~20億トンの硬骨魚がおり,年間に約1億1000万トンの炭酸カルシウムを生成している。これは海洋全体で見た炭酸カルシウム生成量の少なくとも3~15%,最大で45%に相当すると考えられる。
今世紀,海水温の上昇と二酸化炭素の増加によって,魚はさらに多くの炭酸カルシウムを生み出す可能性があると研究チームはみている。Science誌1月16日号に掲載。