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アリ曰く「僕はまだ死んでない」〜日経サイエンス2009年9月号

 アリは手際のよすぎる葬儀屋として有名で,同じ巣の仲間が死ぬと,死骸についた病原体が集団に感染する前に死骸を運び出す。腐敗しつつある死骸の分解物質をアリが検知するのだと考えられたのだが,最近の研究によってこの仮説が崩れそうだ。
 カリフォルニア大学リバーサイド校の昆虫学者たちは,アルゼンチンアリは腐敗が生じる前に仲間の死骸を検知できることを発見した。さらに,生きているアリは「僕はまだ死んでいない」と仲間に知らせる2種類の化学物質(ドリコジアルとイルドミルメシン)を作り出していることもわかった。これらの化合物は仲間の働きアリが死骸を取り除くのを抑制する。アリが死ぬとどちらの化学物質もすぐに消散し,たった10分で強さは半分以下になる。米国科学アカデミー紀要5月4日号に報告。

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