SCOPE & ADVANCE

液体ズームレンズ〜日経サイエンス2007年12月号より

レンズを動かさない超小型ズームのアイデアが登場

 

 カメラマニアの間で人気のズームレンズも,携帯電話や小型デジタルカメラには大きすぎる。そこで,セントラルフロリダ大学の光学教授であるウー(Shin-Tson Wu)とレン(Hongwen Ren)が率いるチームは従来よりも劇的に小型化できるズームレンズを開発した。在来のズームレンズが一連の構成レンズを機械的に動かして焦点距離(つまりは倍率)を調整するのに対して,新開発の適応レンズはレンズの位置を動かさずに,ほぼ瞬時に焦点距離を変える。
 開発した適応レンズには2種類ある。1つは液晶を使うもので,液晶の層に電場を加えて光を屈折する度合いを変える。ある試作品では,電場の強度を同心円状に段階的に変えることによって,液晶層の屈折率を調整した。透明電極に小さな電圧をかけると,レンズの焦点距離が変わる。携帯電話に搭載するズームレンズとしては,倍率が3倍以上で,低電圧動作でバッテリーの持ちのよいものが求められているとウーはいう。
 2番目の方法は「ヒトの目の働きを真似たもの」だ。光を通す柔軟な膜と平らなガラス基板の間に,透明な液体(水または油)を封入した構成。周りを囲んでいる封止シールが虹彩に相当する。これを小型サーボモーターによって縮めると,膜の形が凸状になり,液体レンズの焦点距離が変わる。
 研究チームはアルバカーキとサンフランシスコを拠点とするベンチャー企業であるホロチップ社に関連技術のうち5件の特許をライセンスした。この適応ズームレンズは口径を1mm程度にでき,同社は数年内に商品化したいと考えている。

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