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テストステロンで付き合い上手?〜日経サイエンス2010年4月号より

“攻撃ホルモン”と人間の心理は単純ではなさそう

 

 いわゆる男性ホルモンの1つとして知られるテストステロン。体内を多量のテストステロンが循環しているほうが,リスクが高くて攻撃的な決定をする──というのは本当だろうか? このよく知られた説を確かめるため,スイスと英国の研究グループが興味深い実験を行った。
 121人の女性にテストステロン0.5mgかプラセボ(偽薬)を投与し,2人1組になって「最後通牒ゲーム」をしてもらった。このゲームは本物のお金を用意し,1人がその分け合い方を提案する。もう1人はその提案が不公平だと思ったら拒否できる。ただしその場合には,2人ともお金はもらえない。
 従来の常識からすると,テストステロンを投与された人はリスクが高く社会性のない選択をして,自分の取り分が多くなる分け方を提案するはずだ。しかしNature誌オンライン版12月8日号に掲載された研究結果によると,被験者たちの行動はそうした固定観念を覆すものだった。テストステロンを投与された人はプラセボを投与された人よりも,相手の取り分として高額を提案したのだ。
 明らかに,こうした提案のほうが交渉決裂を招きにくく,お金を手に入れやすくなる。テストステロンの多い人は,拒否されることを避けて自分の自尊心を維持したいという欲求に基づいて行動したのかもしれない。
 この結果はテストステロンに他人との交渉を難しくする働きがないという証拠にはならないが,このホルモンの影響はこれまで考えられていたよりも複雑なようだ。

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