“三次喫煙”に発がん物質〜日経サイエンス2010年6月号より
残留ニコチンが環境中のガスと化学反応して…
喫煙者の家を訪ねた人は誰でも,タバコの火が消えた後にも喫煙の形跡が消えずに残っていることがわかるだろう。家具など室内の表面にくっついたタバコの煙の残留物だ。この「三次喫煙」は健康を脅かすのだろうか?
米国立ローレンス・バークレー研究所のチームは,タバコの煙の残留物が単にそのまま表面に付着しているのではないことを突き止めた。残留ニコチンが亜硝酸ガス(ガス器具や自動車などから放出され,環境中にふつうに存在する物質だ)と化学反応して,タバコ特異的ニトロサミン(TSNA)という発がん性物質を生じる可能性がある。
TSNAは二次喫煙の煙(受動喫煙で吸い込む副流煙)にも含まれているが,三次喫煙の場合は喫煙終了後に環境中の亜硝酸が時間をかけて反応するため,TSNAが数倍に増える。またニコチンは表面に何週間も何カ月間も残るので,喫煙者本人が吸う煙や副流煙に比べ,TSNAを吸引したり皮膚から吸収したりする機会が増える。三次喫煙の影響も最も受けやすいのは子どもたちだろう。
米国科学アカデミー紀要オンライン版2月8日号に報告。ただしこの発見は予備的なもので,三次喫煙が健康に明確な影響を及ぼしているかどうか見極めるにはさらに研究が必要だ。