がんゲノム変異を公開〜日経サイエンス2010年7月号より
国際がんゲノムコンソーシアムの日本の分担成果
日本や米,英,仏,独,中国,豪,スペインなどが参加している「国際がんゲノムコンソーシアム」は,肝臓がん,乳がん,膵臓がんで生じているゲノムの変異を解読し,4月15日にインターネット(http://www.icgc.org)で公開した。
がんではゲノムのあちこちにさまざまな変異が生じ,これが原因で細胞内の秩序が乱れ,際限なく増殖するようになる。ある種のがんでは,特徴的なゲノム変異が見られることも近年の研究からわかってきた。さまざまなタイプのがんについて,特徴的な変異をカタログにしておけば,早期発見にも役立ち,予防や治療にも使えるはずだ──こうした考えのもと,2008年に世界中の研究機関が集まって,がんの種類を分担しながら,ゲノムの解読を目指す国際共同プロジェクトがスタートした。それが国際がんゲノムコンソーシアムで,日本からは理化学研究所と国立がん研究センター,医薬基盤研究機構が参加して,肝炎ウイルス関連の肝臓がんを担当していた(アルコール性の肝臓がんはフランスが作業中)。
1つのがんにつき,最低でも500症例を集めてゲノム解読をする計画で,この春には,日本が解読した肝炎ウイルス関連の肝臓がんのほかに,英国担当の乳がんの一種,オーストラリアとカナダが担当した膵臓がんのデータが公開された。また,イタリアとEU(欧州連合)が新たにコンソーシアムに加わり,参加国は15に,解読するがんは今回公開した3つを含めて20種類となった。