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記憶障害支援に「センスカム」〜日経サイエンス2012年3月号より

アルツハイマー病による記憶破壊を携帯ビデオカメラで遅らせることが可能かも

 

 近年,アルツハイマー病患者を襲う非情な衰えを遅らせたり止めたりするはずの新薬がテストされてきたが,どれも期待はずれに終わっている。例えばイーライ・リリーは脳内に有害タンパク質ができるのを防ぐために作った薬の試験を中止せざるを得なかった。この薬を服用した患者は認知力がむしろ悪化したからだ。

 そこで,科学者たちは別の方法で患者を助けようと,コンピューター技術に目を向けている。一例は「センスカム」という小型カメラを使うものだ。患者がこのカメラをネックレスのように首にかけておくと,一日中,写真を自動的に撮影し続ける。写真を記憶代わりにするのではない。写真によって記憶を刺激しようというアイデアだ。マルセル・プルーストのマドレーヌのように,個々の写真がきっかけとなって,その人のアイデンティティーを定義している記憶のネットワークを呼び起こしていく。

 センスカムは2003年にマイクロソフトが開発し,現在はバイコンという企業が販売している。魚眼レンズで広角画像をとらえ,一定の時間間隔(例えば30秒おき)に新たな画像を1ギガバイトの半導体メモリーに保存する。

 装着者が別の部屋へ移動すると,センサーが明るさの変化を検知して,カメラに新たな撮影を指令する。また,誰かが近くを通り過ぎると,赤外線センサーが体熱を検知して撮影を指示する。こうして装着者の日常生活を反映した時系列サムネイル画像集ができあがり,患者や介護者はこれをパソコンに転送して見ることができる。画像を個別に見てもよいし,時系列に並べて表示することもできる。(続く)

 

続きは日経サイエンス2012年3月号で。

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