飛び立ったコンドル復活計画〜日経サイエンス2012年3月号より
絶滅しかけていたコンドルが劇的な復活を遂げた。
定着を目指してハイテク利用の保護活動が続く
5年ぶりに自然に放たれたカリフォルニアコンドルは,砂岩の崖の上をためらいがちに少し跳びはね,ピンク色の長い首を伸ばして崖をのぞき込んで,3m近い翼を自信なげに広げた。1992年のこの画期的な放鳥を皮切りに,人工飼育された200羽近いコンドルが放たれ,野生で繁殖してきた。1987年には世界で22羽だけだった個体数が396羽にまで増え,主にバハ・カリフォルニア半島とアリゾナ州,カリフォルニア州の南部と中央部を生息地としている。
この大型腐肉食動物が1800万km2の生息域全体に再び広がろうとしているいま,科学者たちは最新鋭の技術を使ってコンドルを完全に自立させようとしている。完全復活を確実にするため,巣のなかの無精卵を有精卵に置き換えるなど,一風変わった手法も試されている。
GPSで追跡
米国魚類野生生物局のコンドル復活プログラムを統括しているグランサム(Jesse Grantham)は,カリフォルニア州ベンチュラのオフィスから,自然のなかを自由に飛び回っている1羽1羽のカリフォルニアコンドルの位置を1mほどの誤差で追跡できる。グランサムらは体重17ポンド(7.7kg)超のコンドルすべてに太陽電池で動くGPS(全地球測位システム)装置と無線送信機を取り付けた。この装置から,1羽につき1日1000点を超える位置情報が送られてくる。
同じ位置に異常に長くとどまっているのは,コンドルにトラブルが発生している印だ。その場合,研究チームのメンバーが人里離れた峡谷に出向いて,病気のコンドルを見つけて健康状態を調べ,すでに死んでいるなら何を食べていたかを調査する。GPSデータは巣を見つけるのにも役立つ。メンバーは巣に産み落とされた卵を1つひとつ調べ,無精卵の場合には飼育中のコンドルが産んだ有精卵と入れ替えている。(続く)
続きは日経サイエンス2012年3月号で。