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「はやぶさ」帰還〜日経サイエンス2010年8月号より

サンプル収容カプセルが回収された

 

 小惑星探査機「はやぶさ」が6月13日,オーストラリア南部上空で大気圏に再突入,7年ぶりに地球に帰還した。総飛行距離は約60億km。月以外の天体に着陸して帰還した探査機は世界で初めて。再突入によって探査機本体は燃え尽きたが,小惑星「イトカワ」のサンプルが入っている可能性があるカプセルはパラシュートで地上に落下,回収された。
 天体から試料を持ち帰るサンプルリターン技術の開発と実証を目的とした「はやぶさ」には,惑星間航行に適した新型のイオンエンジンや自律航法システム,サンプル回収システムなど革新的な技術が数多く採用された。2003年5月に打ち上げられ,約20億kmを旅して2005年9月にイトカワ上空に到達,11月に着陸してサンプル回収作業を行った後,帰途についた(川口淳一郎「『はやぶさ』の挑戦 小惑星探査時代の幕開け」日経サイエンス2006年6月号,別冊日経サイエンス167『見えてきた太陽系の起源と進化』に収載)。
 途中,度重なるエンジントラブルや7週間に及ぶ通信途絶,バッテリーの機能喪失など数多くの困難に見舞われたが,そのつど危機を切り抜け,地球帰還軌道に乗った。最後の難関は探査機本体からのカプセル分離。帰還が予定より3年も延びたため,分離に用いる火薬利用装置や電池が機能するか心配されたが,大気圏再突入3時間前に予定通り分離された。
 再突入成功後に会見した川口淳一郎「はやぶさ」プロジェクトマネージャは「このように1つ1つのステップがこなせてきたのは幸運そのものだった。はやぶさ自身に助けられてここまできた」と語った。回収されたカプセルは密閉状態で日本に運ばれ,宇宙航空研究開発機構(JAXA)相模原キャンパスの専用施設で開封。解析が急がれる。

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