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鼻息のパワー〜日経サイエンス2011年1月号より

鼻を使って移動や意思疎通ができる障害者向け装置が登場

 

 重度の障害者が移動と意思疎通を取り戻す方法は? そのカギは文字通り目と鼻の先,鼻にあるのかもしれない。身体が麻痺した人が鼻をクンクンするだけで,書いたりネットサーフィンしたり電動車椅子を操作したりできる装置が発明された。米国科学アカデミー紀要に最近報告された初期実験は,重度の麻痺患者が日常の仕事を行う新方法の可能性を示している。
 鼻で嗅ぐ動作の一部は軟口蓋(口蓋の上部奥を覆っている組織)の脳神経によって制御されている。これらの神経は脊髄ではなく脳から直接出ているため,多くの重度麻痺患者でも損傷を受けていない。そして,この神経はまばたきやすすり飲み,鼻息をプッと吹かすといった動作も制御している。
 イスラエルのレホボトにあるワイツマン科学研究所のプロトキン(Anton Plotkin)らが開発した「鼻息コントローラー」は,鼻に収まる小さなプラスチック製チューブを利用して圧力を測定する。鼻息の強度変化と,向き(吹いているか吸っているか)を含めた頻度の変化を,パソコンや電動車椅子に対する命令に変換する。
 15人の障害者で試したところ,13人はメッセージの記述やネットサーフィンができるようになり,1人は車いすの操作が可能になった(もう1人は進展が見られなかった)。さらに実験が必要だが,プロトキンは楽観的だ。「鼻息でほとんど何でも制御できることがわかった」。

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