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地球型惑星発見で膨らむ生命の期待〜日経サイエンス2011年2月号より

グリーゼ581gの発見が地球外生命の理論研究を刺激中

 

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NASA

 天文学者は生命が存在する太陽系外の惑星を長らく探し続けている。去る秋に,暑すぎず寒すぎもしない系外惑星「グリーゼ581g」の報告が入ったとき,それは夢の答えに見えた。「確認されれば,待ちに待った惑星に間違いないと思う」とワシントン大学(シアトル)の宇宙生物学者バーンズ(Rory Barnes)はいう(バーンズ自身はこの発見の研究には加わらなかった)。
 だが,その確認はしばらくお預けになりそうだ。カリフォルニア大学サンタクルーズ校の天文学者ボーグト(Steven Vogt)らがこの“ちょうどよい”系外惑星の発見を報告してすぐ,ライバルのスイスの研究チームが,自分たちのデータからはグリーゼ581gの存在を確認できないと発表した。11年間にわたる微妙で間接的な望遠鏡観測に基づく今回の新発見を確認するには,さらに数年が必要かもしれない。 
 しかし,このとても興味深いデータは天文学者たちを刺激し,地球外生命の存在に必要となる条件の研究が一段と進み始めた。グリーゼ581gが存在する可能性が示されたことで,他の地球サイズの惑星上の生命体に関するスーパーコンピューター・モデルの精度を向上する必要性が高まった。

 

黒い植物

 理論天体物理学者が中心となり,天体観測の結果と地球上生命についての知識を組み合わせて,系外惑星の環境をシミュレートしている。系外惑星発見ラッシュのさなか,精度の高いモデルができれば,宇宙に生命の兆候を探す将来の計画に重要な指針を提供できるだろう。 
 最近はグリーゼ581gがこの研究の焦点となっている。この星は赤色矮星の周りをほぼ円形の軌道を描いて回っており,ちょうどよい距離だけ主星から離れていて,惑星表面は液体の水が存在しうる温度になっていると考えられる。これは生命存在の必須条件だ。ただし,この赤色矮星が放射する光は私たちの太陽のたった1%しかない。ニューヨークにある米航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙研究所のキアン(Nancy Kiang)とワシントン大学(シアトル)が中核となっている仮想惑星研究所(VPL)の共同研究者たちのモデルによると,この惑星の光合成生物はこうした弱い光を最大限吸収しようとするだろうから,黒い色をしているだろうという(N. Y. キアン「赤,青,黒… 異星の植物は何色か」日経サイエンス2008年7月号参照)。

 

憩いのトワイライトゾーン

 また,暫定的な計算結果から,グリーゼ581gが常に片面を主星に向けていて,その面の温度は最高で64℃に達する一方,反対側の暗い面は北極のような厳しい冬にあるという見方が支持された。この位置関係についてはまだ異論もあるが,これが正しい場合,両者の中間地域,ボーグトのいう“永遠の夕日”が当たっている部分に,生物がすみやすい領域が広がっているかもしれない。
 キアンによると,そうしたトワイライトゾーンでは経度によって届く光の波長が異なるので(光が斜めに差すため,大気を透過してくる距離が異なり,散乱の度合いが変わることによる),植物はそれに適応した色素を進化させたものになっていて,惑星表面に虹のような色の勾配を描き出している可能性もあるという。
 グリーゼ581gは理論研究者を活気づけただけでなく,太陽系外に同様の惑星をたくさん見つけ出そうという天文学者の意欲をそそっている。ボーグトは「今回が非常に幸運で次の発見まで再び長く待たねばならないのかもしれないし,こうした惑星がたくさんあるのかもしれない」という。

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