SCOPE & ADVANCE

25年目の新しい墓~日経サイエンス2011年6月号より

チェルノブイリ原発事故から四半世紀
「石棺」に代わる新シェルターが建設される

 

 頂上が自由の女神像(高さ93m)よりも高いアーチを想像してほしい。そして,その巨大なカマボコ状の構造物が地上をサッカー競技場3つ分ほどスライドすると考えてほしい。史上最大の可動建築物だ。この鉄製の巨大カマボコ屋根によって,史上最悪の原発事故現場を閉じ込める計画が進んでいる。そう,ウクライナにあるチェルノブイリ原子力発電所の跡だ。自動機械によってこの廃墟を解体し,残骸を永久に封印する。

 

 1986年4月26日に4号炉が爆発し,飛散した放射性物質が遠く日本や米国でも検出された。その後,ソ連(当時)は放射性物質を閉じ込めるため,原子炉を鉄筋コンクリートの構造物で覆った。一般に「石棺」と呼ばれているものだ。「実に大変な大仕事だったが,それから25年がたち,石棺が壊れる心配が出てきた」とバテル記念研究所の土木・環境工学技術者シュミーマン(Eric Schmieman)は説明する。

 

 石棺は建設作業員の被曝を最小限に抑えるべく大急ぎで造られたので,永久にもつようにはできていない。それどころか鉄材を互いに立てかけて留めてあるだけで,「トランプ札で作った家みたいな設計だ」とシュミーマンはいう。「溶接したところもボルトを締めてつないだところもない。ちょっとした地震で簡単に崩れてしまうだろう」。

 

 フランスの建設会社ノバルカが石棺を覆う新しいシェルター(NSC)を建設することになり,シュミーマンはその設計に協力している。原子炉がいまだに放射能を持っているため,新シェルターは建設作業員の安全に配慮した設計になっている。アーチは石棺の上で建造するのではなく,プレハブ方式によって近くで組み立てる。油圧ジャッキによってこれを持ち上げ,フッ素樹脂製のベアリングに載せて300mほどスライドさせて,石棺を覆う。こうして原子炉を密封したら,シェルター内に設けた3台の自動クレーンを遠隔操作して石棺と原子炉を解体し,残された放射性の塵を処理する。

 

 ノバルカは新シェルターを2014年夏までに建造する計画で,総コスト21億ドルは29カ国で分担する。新シェルターは少なくとも100年はもつと期待されている。

 

 

ほかにもいろいろ載ってます! 日経サイエンス6月号

 

再録:別冊日経サイエンス183「震災と原発」

サイト内の関連記事を読む