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研究の復旧これから~日経サイエンス2011年6月号より

東日本大震災は研究にも大きな爪痕を残し,復旧に向けた取り組みが続く

 

 3月11日に起きた東日本大地震で,東北地方と関東地方にある研究機関や大学は大きな被害を受けた。研究施設の中には,再稼働に数カ月以上を要するところもかなりある。国際競争が激しい先端研究において数カ月の実験中断は痛手だ。生命科学分野では,長時間の停電や断水で冷蔵施設や培養施設などが機能を停止,貴重な試料が失われ,研究活動の継続すら危ぶまれるケースも出ている。
 大地震発生時,仙台市は震度6の激しい揺れに襲われた。市内に広大なキャンパスを持つ東北大学は建物に大きな被害が発生,電気ガス水道はすべてストップし,研究者や学生が建物に入れない状況になった。仙台市内では多数の死傷者が発生,大学側は学生に帰省を呼びかけ,研究・教育活動は全面的に止まった。
 4月上旬時点で,理工系の学部や大学院が集まる青葉山キャンパスはかなり復旧した。ただ,工学部では電気系など3つの研究棟は被害が大きく,使えない状態が続いている。地震研究の拠点である地震・噴火予知研究観測センターでは地割れの影響で一部建物が傾き,立ち入り禁止。ガスはほぼ全域で止まったままだ。
 大きな余震も続く。4月7日深夜,仙台は再び震度6の揺れを受け,片付けたばかりの研究室の床がまた資料で埋まる状況が起きた。完全復旧はまだ先だが,5月の連休明けから新学期が始まる予定だ。

 

直撃されたTSUKUBA

 茨城県のかなりの地域も震度6の揺れで,つくば市にある高エネルギー加速器研究機構(KEK)や宇宙航空研究開発機構(JAXA),産業技術総合研究所など世界的に知られる研究機関や筑波大学に被害が出た。
 JAXA筑波宇宙センターでは国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の運用管制を行う建物が被災,約10日間管制業務ができなくなった。地震発生時,宇宙ステーションには,日本が打ち上げた無人輸送機「こうのとり」2号機がドッキング中で,この管制も行われ多忙を極めていたが,全業務が中断,回線も切れた。即座に米ヒューストンが業務を代行,管制は継続された。「こうのとり」は3月30日,任務を終え大気圏に突入して燃え尽きた。
 基礎研究や技術開発に用いる世界的な加速器施設も被害を受けた。東海村にある大強度陽子加速器施設J-PARCと,つくば市にあるKEKのフォトンファクトリーなどだ。

 

 

続きは4月25日発売の6月号誌面でどうぞ。

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