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小さな脳を制御~日経サイエンス2011年5月号より

レーザー光で線虫の行動を操った

 

 脳の完全制御に一歩近づく研究成果が出た。ただし,制御した脳は砂つぶよりも小さいが……。

 ハーバード大学の研究チームが,線虫を操作できるコンピューターシステムを作った。シャーレのなかで自由に泳いでいる線虫の個々のニューロンにレーザー光を当てることで刺激し,線虫を動かしたり止めたり,接触感覚を与えたり,さらには産卵を促すことまでできる。動物の神経系の働きを完全に理解するのに役立つだろう。

 線虫シノラブディス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)は生物学の世界で最も詳しく調べられた生き物といえ,302個のニューロンと約5000カ所の神経接続を含め,細胞の種類と位置が完全に解明されている。だが,「ニューロンが神経網のなかでどのように連携して働いているのか,正確にはわかっていない」と,ハーバード大学の生物物理学専攻の大学院生ライファー(Andrew Leifer)はいう。例えば長さ約1mmのこの線虫が身体をくねらせて泳ぐとき,100カ所ほどある筋肉の緊縮と弛緩をどう協調させているのだろうか?

 

自由に泳がせながら追跡
 こうした謎を解明するため,ライファーらは線虫の遺伝子を操作して,特定の細胞に光感受性を持たせた。近年に開発された「オプトジェネティクス」という手法だ。
 線虫の身体は透明なので,絞り込んだレーザーを3μmの位置精度で当てることで,個々のニューロンを興奮させたり抑制したりできる。電極を挿入するといった身体を傷つける方法を取らずにすむ。
 ライファーは特注の台に顕微鏡を載せ,線虫がシャーレのなかで泳ぎ回るのを追跡した。また,その顕微鏡画像を解析して標的ニューロンの場所を割り出し,そこにレーザーの焦点を合わせて照射するソフトウエアを作成した。研究成果はNature Methods誌のウェブサイトに発表。
 過去に別のチームが,線虫を動けなくした状態で,オプトジェネティクスによって個々のニューロンを制御した例がいくつかあった。しかし,線虫の生理学を理解するには自由に泳いでいる状態で線虫を制御する必要があるとライファーはいう。彼らは,線虫が泳いでいるときに,運動シグナルが神経だけでなく筋肉細胞自体を通して身体を伝わっていく様子を示すのに成功した。
 

 

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