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コロナを熱しているのは?~日経サイエンス2011年5月号より

短時間のプラズマ噴出が寄与している可能性

 

 1940年代から太陽物理学者を悩ませてきた問題がある。熱源である太陽中心から遠く離れたコロナ(太陽大気の最外層)が,太陽表面や下層大気よりも高温なのはなぜなのかという問題だ。
 さまざまな説が提唱されてきた。コロナに向かって音波や磁場の波が伝わって熱を供給しているという見方や,コロナ中のもつれた磁力線がリコネクション(つなぎ替え)を起こした際に生じる「ナノフレア」という短時間の爆発現象がエネルギーになっているという説などがある。最近,新世代の太陽観測衛星による観測結果から,別のメカニズムが浮上してきた。プラズマ(高温の電離ガス)が上層大気へと連続的に運ばれ,これがコロナの熱の大部分をもたらしている可能性があるという。

 

「スピキュール」の上で温度上昇
 太陽の下層大気である彩層からプラズマがジェットとなって一時的に噴き上がる「スピキュール」という現象が知られているが,これがコロナを数百万度という超高温に加熱するのに一役買っているらしいことがわかった。スピキュールがなぜ生じるのかはよくわかっていないが,持続時間は100秒ほど,秒速50〜100kmのスピードで彩層から噴き出している。論文の主執筆者であるロッキード・マーチン太陽宇宙物理学研究所(カリフォルニア州)のド・ポンテュー(Bart de Pontieu)がいうように,このスピードはサンフランシスコからロンドンまで数分で移動できる速度だ。
 Science誌に掲載されたド・ポンテューらの研究は,2010年に米航空宇宙局(NASA)が打ち上げたソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリーと,2006年に運用を始めた日本の太陽観測衛星「ひので」による観測結果をもとにしている。どちらの太陽観測衛星も太陽の詳細な画像を数秒に1回の割合で撮影できるため,急速に変化する過渡現象を観測可能だ。この結果,温度が数万度のスピキュールが彩層から噴き上がると,その上にあるコロナ部分の温度が100万〜200万度も急上昇することに研究グループは気づいた。
 なぜ彩層のプラズマが高速で噴出するのか,どうしてコロナをそのような超高温に加熱するのか,いずれも不明だ。しかし,スピキュールとコロナ加熱の関連性は70年来の謎を解決する可能性を秘めていると,ロンドン大学ユニバーシティカレッジのフィリップス(Kenneth Phillips)はいう。

 

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