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ワトソン君,卒業試験をパス~日経サイエンス2011年5月号より

クイズ王に圧勝した人工知能が次に挑むのは?

 

 IBMが4年がかりで開発した人工知能「ワトソン」が,米国の人気クイズ番組「ジョパディ」の世界チャンピオンと2月に対決して圧勝した。ワトソンのクイズ番組出演は3夜連続で放映されたこの対決で最後だが,これはむしろ始まりにすぎない。実社会でどう活躍するかはこれからだ。

 

自然言語で問題を理解
 ワトソンの大きな特徴は自然言語を理解する能力を備えていること。「人間が話したり書いたりしたことを単に受け止めるのではなく,言葉の意味をとらえ,その人がどういう意味で何をいっているのかを理解する」とIBMの研究担当副社長フレーズ(Katharine Frase)はいう。
 この能力があるから,ワトソンはクイズ番組で問題の糸口を把握できたわけだが,実際のビジネスシーンでは顧客が何を欲しているかを読み解くのにワトソンを使えるだろう。例えば顧客から企業が受ける電話問い合わせで,「何が問題で困っているのかを顧客が説明しても,受け手が話を理解できないことがよくある」とフレーズはいう。ワトソンのようなシステムは一種の“通訳”として働き,お客の説明を技術者にわかりやすい専門用語に翻訳できるだろう。

人間ワザを超えた強み
 何を尋ねられているかを把握したら,次は答えを見つけなくてはならない。先のクイズ番組の際,ワトソンには合計2億ページにのぼる百科事典と新聞,文学作品をあらかじめ搭載してあった。知識欲旺盛なジョパディのクイズ王なら,それまでの人生でこうした情報のかなりの部分を吸収ずみだったろう。だが,例えば医学の文献を考えてみると,「実に多岐にわたる専門情報があって,1人の医師にすべてに精通しているよう求めるのはほとんど非人間的」とフレーズはいう。これに対しワトソンは,まさに人間ではないので,それを完璧にこなす。
 IBMがワトソンをもとに取り組む最初のプロジェクトは,小さな町の開業医が奇妙な症状を示している患者を適切に診断できるよう助けるシステムの開発になるだろう。その種のものとしてはほかに,裁判所が過去に下したあらゆる判例を蓄積した法律向けのシステムや,全世界の上場企業が公開しているすべての財務資料の全文を記憶している財務向けシステムなど,いろいろ考えられる。

 

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