きょうの日経サイエンス

2011年2月14日

鳥の起源をめぐる論争に終止符

2月11日の新聞各紙で報道された「“鳥の祖先は恐竜”の証明」のニュースはご覧になりましたか? Science誌に発表された成果です(Science誌のサイトから概要だけなら日本語で読めます)。

 

恐竜のなかでも,ティラノサウルスなどを含む,二足歩行をしていた肉食恐竜の仲間「獣脚類」が,鳥の直接の祖先であるという説は,近年の羽毛恐竜の発見などでますます有力になっています。けれども,反論もあって,その中でも有力だったのが「前肢の指」問題でした。

 

獣脚類恐竜の前肢には指が3本しかなく,私たちでいえば親指(D1),人差し指(D2),中指(D3)に当たります。一方,鳥では前肢が翼になっていますが,骨には指の名残があり,これは人差し指,中指,薬指(D4)とされていました。

 

祖先の時代にいったん失った薬指がまた復活し,さらにそれが退化して痕跡的になるというのは,考えにくいので,この指問題が「鳥の祖先は恐竜とは別のタイプの爬虫類」という説の根拠になっていたのです。

 

Science誌2月11日号に発表された東北大学・田村宏治教授のお仕事は,ニワトリの発生の時に指ではたらく遺伝子を調べたもの。これをマウスの発生と比較することで,ニワトリでD2,D3,D4とされていたのが,実はD1,D2,D3であったことを証明しました(ただ,場所的には本来はD2,D3,D4となるはずのところで,ずれていたそうです)。

 

このニュース,詫摩にとっては2つの意味で感慨あるものでした。

 

1つは鳥の起源をめぐる「指問題」に決着がついたこと。
日経サイエンス1998年5月号に「恐竜はこうして鳥になった」という記事を載せ,これを担当しました。この中で著者のパディアンとキアッペは「鳥の指の解釈が間違っている」と,化石から説き明かそうとしています。ですが,正直なところ,説得力は十分ではありませんでした。それが,今回,非常にクリアになったことです。

 

もう1つは,とても個人的な思い出なのですが,研究をなさったのが田村宏治先生であること。田村先生には1999年9月号の「内臓はどのようにして左右非対称になるのか」の翻訳をお願いしたことがあります。こちらも発生プロセスを遺伝子の発現を追いながら,解いていく内容です。

 

当時の田村先生はこの記事の著者である米国ソーク研究所のベルモンテ博士の研究室から日本に戻ったばかりで,東北大の助手でした。掲載誌の発売後,まったくの別件で東北大に出張し,ふいに思い立って,田村先生を訪ねたことがあります。アポイントなしの突然の訪問にもかかわらず,歓待して下さり,研究者仲間からの記事の反響などを話して下さいました。

 

あれからもう10年になるのですね?。田村先生,始祖鳥の発見以来,鳥の起源をめぐっての150年に及ぶ論争に終止符を打った見事な研究成果,おめでとうございます!(詫摩)