2011年2月2日
天然ウナギの卵が見つかりました!
今日の朝刊各紙で紹介されていますが,東京大学大気海洋研究所の塚本勝巳教授らと水産総合研究センターは天然ウナギ(ニホンウナギ)の卵を採集することに世界で初めて成功しました。採集地は太平洋のマリアナ諸島沖。実際に採集したのは2009年5月ですが,その卵が天然ウナギのものであるかどうか断定するのに時間がかかったそうです。
ウナギの生活史,特に産卵場の場所については1930年代から探索がされていましたが,なかなか進展がみられず,長年の謎でした。そして天然の産卵の状況がよくわからなかったため,タイやヒラメなどのように人工的に産卵させて成魚を育て,その成魚から次代の成魚を育てる完全養殖が今もってできていません。私たちが食べているウナギはその全量を,河口などで捕獲される天然の稚魚(シラスウナギ)に頼っています。養殖ウナギといっても,もとはすべて天然のものです。
それが2005年,冒頭に紹介した塚本教授らによって産卵場が発見され,2010年には水産総合研究センターの研究グループが実験室での完全養殖に成功しました。今回の天然の卵の発見はこうした近年の研究の積み重ねの上に成し遂げられたものです。では,いかにして産卵場が発見され,完全養殖が実現したのでしょう? そのあたりの話が日経サイエンス2010年8月号の記事「旅するウナギの謎」で詳しく紹介されています。
その記事の準備を始めたのが昨年のちょうど今頃。新月の真夜中,塚本教授の研究室の方に同行し,神奈川県の相模川河口でシラスウナギの採集の模様を取材しました。寒風の中,ライトを照らして水面を見つめ,シラスウナギの姿を探す間,いろいろ研究の話をうかがったのですが,寒さを忘れ眠気も吹き飛ぶほどの面白さで,「これは力を入れて記事にしなければ」と思ったのでした。(中島)