きょうの日経サイエンス

2010年7月21日

Gが…Gが…,ゴンゴンいうし

 

「この回は一切,笑いがない」とは,NHKエデュケーショナルの森美樹さんの弁。暗闇の中で青いライトを浴びて浮かび上がる巨大トーラスは幻想的です。Michiruさんをはじめとするパフォーマーさんの演技もあって,芸術的な映像です。

 

もともとは番組制作に協力しているガリレオ工房の方がMichiruさんの演技に魅せられたのが,今回の企画のきっかけ。「美しいものを見せたい。そこにも科学があることを知ってもらいたい」というガリレオ工房さんの意向で,このような映像になりました。

 

ガリレオ工房の方は空中バレエに「角運動量保存の法則」を見たわけですが,担当ディレクターの黒木大紀さんは「美」を見ます。「角運動量とか『何それ?』って感じでした」。番組の最後で細野晴臣さんのナレーションが「華麗な空中バレエの中にも自然の法則が隠されていることがわかった」と言いますが,「細野さん,そのセリフ,僕に言っているんですか?」と黒木さん。

 

当初の設計では,計算上は速さは4倍になるはずだったそうです。ところが,安全面を考慮してトーラスに改良を加えているうちに,どんどん重くなってしまい,結果,4人が移動しても回転スピードは2倍弱となってしまいました。

 

詫摩は収録を見学させてもらったのですが,肉眼で実物を見ていると,速さが変わっていることが認識できなませんでした。ところが不思議なことに,モニターで再生してもらうと,速くなっていることがわかります。認知の問題なのでしょうが,面白いなぁと思いました。

 

Michiruさんたちの空中バレエの演技では足をおもに使い,手の力はあまり使わないそうです。この大実験は手の握力が大切になる上に,あのトーラスは回すと遠心力がかかります。練習中には「Gが,Gが」と言っていたそうです。一回試すと,腕が疲れてしまうので,そう何度も続けて試すわけには行きません。しかし,さすがはプロ!と感心したのですが,腕を組む演技から身体を反らす演技に変え,スタッフがそれを口で伝えただけで,見事に1回でピシッと決めました。

 

 

さて,「今回は一切,笑いがない」はずなのですが,実はあります。頭を反らす演技では,4人の頭がぶつかりやすいのです。左の写真はトーラスを回していない時に撮ったものですが「ぶつかりそう?」って思いますよね? 

 

実は本番で,実際に頭をぶつけたそうです。「ゴンゴン,音がして,笑いをこらえるのが大変でした」と収録が終わった後にほっとしたパフォーマーさんが話していました。本番の映像をNHKエデュケーショナルのサイトで見ることができますが,よ?く見てください。1人だけ,首を反らさずに持ち上げ気味にしていますよね? それには,こんなウラ話があったのです!

 

 

 

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