きょうの日経サイエンス

2010年7月7日

ノラ象のいる国にて

 

NHK「大科学実験」初めての海外ロケ。特注の筏(いかだ)に象を乗せ,その体重を測ります。

海外ロケだなんて,さすがは10万ドルコインをポケットから出す御仁がバックにいるだけのことはある!と最初は感心してしまいましたが,実は逆でした。

 

 

今回は,チーフプロデューサーの森美樹さんと,実際に現地で収録した青木裕幸ディレクター,日本でコーディネートをした小川浩史プロダクション・マネージャーの3人に話を伺いました。海外ロケ+動物モノの苦労があったせいなのか,青木さんや小川さんのキャラなのか,クジラの回に引き続き今回もしゃべり倒されてきました。

 

収録で一番,心配したのは,「象がゆらゆら揺れる筏(いかだ)に乗ってくれるか?」でした。これは杞憂でも何でもなく,象が乗るまで大変だったのは番組でご覧の通り。「はしけに草を敷いたら食べちゃうし?」(森さん)。

 

最初は日本での収録を考えたのだそうですが,日本では象は非日常的な存在です。森さんの言葉を借りれば「日本の象はセレブ」なので,出演料もお高いし,筏に乗るような真似はなかなかしてくれない。一方,ロケ地となったタイは「ノラ象のいる国」(青木さん)です。“野生の象”ではなく“ノラ象”。そのくらい,タイでは象は身近な存在です。出演料も一桁安い上に,たくさんの象の中から選り取り見取りで筏に乗ってくれそうな象を選ぶことができます。

 

番組にもあるように,筏はタイの人たちが現地で入手した材料で造ってくれました。これが,日本のスタッフをヤキモキさせたようです。

 

タイの方たちは,試行錯誤でいい物に仕上げていくスタイル。一方,日本ではデータを重んじます。とくに,NHKの海外ロケ申請では安全性を重視するので,この筏の構造上の安全を求められたそうです。タイから送られてくる設計図をもとに,小川さんは日本溶接協会やメーカーなどに強度の計算を頼みますが,「使われている素材(の質)や川の流れなどがわからないと何とも言えない」という至極もっともなご意見。「それでも,電話口では『たぶん大丈夫だと思います』と言ってもらえました」。

 

一方で撮影隊が気にしたのは絵になるかどうか。あらかじめ測ってもらった象の体重と筏の大きさをもとに,長年にわたり科学教育番組を手がけてきた「羽岡(伸三郎)さんに計算してもらったら,『おい,4cmくらいしか沈まないぞ』。それじゃあ,絵にならない!」と青木さん。そこからまたタイとのやり取り,やり取り。

 

そうこうしながら現地に行ってみたら,象が当初の予定から変更になっていたそうです。カーチャというメス象からビッグに。オスなので身体は大きいのですが,青木さんによると「一番やせて見えた」のだそう。カーチャの体重はあらかじめ測っていたのですが,ビッグの体重は誰も知りません。スタッフの誰一人として“正解”を知らないままの大実験となりました。

 

結果的に筏は10cm程度沈み,最後の測量で,筏方式で求めた体重がほぼ正確だったことがわかりました。「一番,喜んだのは私たちスタッフだったよね」とは森さんの言葉。良かったですよね!

 

この回は,ウラ話の話題満載なのですが,続きは再放送の時に!

 

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