きょうの日経サイエンス

2010年7月2日

宇宙とつながる地下世界

 奥飛騨山中にある神岡鉱山(岐阜県飛騨市)は,その昔は銀山として,明治に入ってからは亜鉛と鉛の鉱山として賑わいましたが,とうに採掘は終わり,たくさんあった鉱山住宅などは山野に戻りつつあります。しかし,その鉱山の地下に入ってみると,かなり頻繁に車が往来し,作業着姿の人も見かけます。ヘルメット姿の外国の人もいます。神岡鉱山は今や素粒子物理学と宇宙物理学の観測と実験に関する世界最大規模の地下施設となり,その規模はさらに拡大しつつあるからです。
 神岡で最初に建設された実験装置はカミオカンデ。16万光年以上彼方の大マゼラン雲で起きた超新星爆発によるニュートリノ(素粒子の一種です)をとらえ,研究リーダーの小柴昌俊博士がノーベル賞を受賞しました。カミオカンデの後継のスーパーカミオカンデは,質量がゼロとされたニュートリノが質量を持つことを明らかにし,素粒子物理学の理論的な枠組みである標準モデルに見直しを迫る成果として世界的な大ニュースとなりました。研究リーダーの戸塚洋二博士はノーベル賞の最有力候補でしたが,長く厳しい闘病の末に亡くなられました。神岡では,その他にも教科書を書き換えるような成果がいくつもあがっています。
 そして今,小柴博士,戸塚博士の薫陶や支援を受けた研究者がいくつもの新たなプロジェクトを進めています。最新号で紹介したハイパーカミオカンデはその1つです。前号のニュースページ(NEWS SCAN)で紹介した重力波天文台や,前々号で紹介した初期宇宙を探るエックスマスという装置も神岡にあります。これらの記事もあわせて読むと,神岡がいかなる宇宙の謎に挑み,物質の根源に迫ろうとしているのか,その全容がわかります。(中島)