2010年4月7日
クジラじゃなくて,ナマズ・・・むしろ「なまず」
第2回の放送は「空飛ぶクジラ」。クジラ型ソーラーバルーンで人を持ち上げることができるか? という,今回も無駄に大がかりな実験でした。
『大科学実験』は全部で26回を予定しているそうですが,制作チームが一番最初に手がけ始めたのは,この「空飛ぶクジラ」だそうです。予備実験やクジラの製作に時間がかかったため,途中で第1回放送の「音の速さを見てみよう」に抜かされたみたいです。
最初に作り始めた&大変だった,ということで制作スタッフの思い入れも強いよう。チーフプロデューサー(CP)の森美樹さんに話をきいたところ,まぁ?話す,話す。
番組では見事なクジラでしたが,最初からあの形だったわけではありません。最初はフィルムを2枚貼り合わせただけの封筒型。クジラというよりナマズです。何となく間が抜けたこの顔は「なまず」と平仮名で書きたくなるくらいです。
こうした小さい「なまず型バルーン」で実験を重ねるのと同時進行で美大出身者を中心とするチームは,本番のクジラに近い立体裁断のクジラデザインを着々と進めていました。
デザイン画を見せられた森CP,
「私としては,どのくらいの浮力が得られるのか,まずそこを考えてほしかったのだけれど・・・」
立体裁断になったクジラはぐっと格好良く,それらしく見えますが,形が複雑になった分,風を受けてどう動くかの予測が難しくなります。しっぽよりも頭の方が大きくて空気がたくさん入る分,縦に立ち上がってしまうとも予想されたそうです。そうなると,下にぶら下がっている乗り手はどうなるんだ?!
当初はもちろん,プロのスタントマンさんが乗り手になるはずだったのですが,「リスクがどのくらいか,こちらも説明できないので」という理由で,スタントマンの起用は断念。マネキンを使ったほうがよいのではないかと,最後まで悩んだそうです。
テレビ業界のことはよく知らないのですが,こういう場合,危険な役を引き受けるのはCPなのだとか。と,いうわけで,乗り手は森美樹CPです。名前で見当はつくと思いますが,女性です。さすがです,男女平等が徹底しています。
横に長いバルーンなので,風を受けて流されたら大変です。クジラの4カ所にヒモを付け,引っ張って固定していますが,あまりに強く引っ張ると,クジラに穴が開いてしまいます。
詫摩「つまり,風が吹いたら“クジラをとるか,森さんをとるか”って,ことですか?」
森「そうなんですよ。で,ヤツらはクジラをとるんですよ」(冗談です・・・たぶん)
このクジラ,しっぽに穴が開いたそうです。しっぽ側にいるスタッフはそれに気がついて叫びますが,頭の方にいるスタッフには聞こえません(50mですから)。乗り手の森さんは前を向いて椅子に座っているので,後ろの様子に気がつきません。そのうち,しっぽがばたつき始めて,ディレクターさんが「もう終わります!」と言いますが,森さんは「大丈夫だよ,もう1回,撮ろうよ」。CPが「終了」と言わないと,終わらないそうですが,このときは危険と判断したディレクターさんが森についていたカメラや命綱などを外し始め,外し終えたところで,クジラは流れていきました。
森「しっぽ側のスタッフには私が下りたことは見えなかったので,椅子ごとクジラが流されていくのを見て『あ,森さんが・・・』」
クジラは流されてしまいましたが,固定用に車につなげたヒモが1本だけ切れずに残っていて,慌ててその車で追いかけ,皆でクジラを割いて,着地させたそうです。クジラを割いたときには中から熱風が出てきたとか。
みなさま,お疲れさまでした。
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