きょうの日経サイエンス

2011年10月6日

「準結晶はどこまで解明されたか」ダウンロード販売開始しました

2011年のノーベル化学賞の受賞対象となった準結晶の研究で知られ,惜しくも選に漏れた蔡安邦東北大教授による「準結晶はどこまで解明されたか」(1996年7月号掲載)のダウンロード販売を開始しました。ダウンロードはページはこちらです。

 

なお,この記事は通常はダウンロード販売の対象外で,今回新たに誌面をスキャナーで読み込んで作成しております。画面がやや粗めで文字検索もできませんが,何卒ご了承下さい。特別価格の300円でご提供いたします。

 

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2011年のノーベル化学賞は「準結晶の発見」でイスラエル工科大学のD. シェヒトマン(Daniel Shechtman, 70)に贈られることになりました。準結晶は結晶とは違って原子の配列パターンが周期的に繰り返しているわけではないものの,高い秩序を持っている物質のこと。シェヒトマンは1984年,液状のアルミニウム・マンガン合金を急冷した固体が,この不思議なパターンを示すことを初めて発見しました。

 

周期的に繰り返さない結晶が存在するというのは,当時の科学の常識からするとありえないことでした。発表会見では,1982年4月8日,シェヒトマンが初めてこのパターンを観測した時の実験ノートが公開されましたが,そこには「10回対称???」と記されており,ありえないはずの10回の回転対称性を発見したシェヒトマンの驚きが伝わってきます。彼は慎重に実験を積み重ね,2年後に論文を発表しました。

 

ですが,その後の道のりは平坦ではありませんでした。化学界の大物がこぞって準結晶の存在を疑問視し,シェヒトマンはそれまで属していた研究グループを離れて研究を続けました。風向きが変わるきっかけを作ったのは,東北大学金属研究所の蔡安邦が行った実験でした。シェヒトマンが作った結晶は非常に壊れやすいものでしたが,蔡らはアルミニウム・銅・鉄や,アルミニウム・ニッケル・銅などの安定な準結晶を作ることに成功したのです。これで構造解析が飛躍的に進み,準結晶の存在が広く受け入れられることになりました。

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