
持ち手のついたコーヒーカップと穴の開いたドーナツ。トポロジー(位相幾何学)の世界でこの2つの図形は同じ形とみなされる。この一見抽象的な数学から生まれた「トポロジカルデータ解析」という手法が,実世界のデータ解析で広く使われ始めている。神経科学では,ニューロンの発火パターンのデータから,脳内で自分の位置を把握するグリッド細胞が周囲の環境を地図化する際にドーナツ表面の曲面構造を用いていることがわかってきた。ほかにも,材料開発で物質中の原子配置を調べたり,2万次元を超える遺伝子発現データから細胞どうしの関係を調べたりと,その適用先は分野を選ばない。トポロジカルデータ解析は,ビッグデータが重宝される現代における「縁の下の力持ち」だ。
トポロジーでデータの「かたち」を捉える K. ヒューストン=エドワーズ
これは使える!トポロジカルデータ解析 材料開発,生物学から企業戦略まで
出村政彬 協力:平岡裕章