日経サイエンス  2023年11月号

特集:ついに捉えた背景重力波

編集部

宇宙を電波で観測すると,灯台のように規則正しい時間間隔で点滅を繰り返す天体「パルサー」があちこちに見つかる。天文学者は約20年,数十個のパルサーに狙いを定め,点滅する時間間隔のわずかなゆらぎを調べてきた。そして膨大な観測データを解析した結果,そのゆらぎは,宇宙に満ちている重力波によって生じていることが明らかになった。重力波は時空の歪みが波となって光速で伝わる現象。捉えられた重力波は波長が長い“うねり”のようなもので,あらゆる方向から常時,地球に到来していることから「背景重力波」と呼ばれる。その発生源は全宇宙に散らばる巨大ブラックホールの連星である可能性が高いが,原始宇宙由来の成分も含まれているかもしれない。重力波天文学の新たな幕開けだ。


宇宙の灯台パルサーで時空のうねりを照らし出す  中島林彦 協力:高橋慶太郎
新たな窓から覗く 巨大ブラックホールのダンスと原始宇宙  中島林彦 協力:高橋慶太郎